千駄ヶ谷への出張で、中央線沿線の景色を、特急かいじの車窓から見ていた。さびしい風景に2度……
4、5人でかつぐ花神輿
――目のさめるような青の半被を着て、子どもたちばかりでかついでいた。おとなが2人くらい先導していたっけ。
さぞや地元の自治会のおじさんたちが、苦労して準備したんだろうなと思う半面、その神輿を傍から見ていたアベックが視野のなかにあって……花神輿のかざりのにぎやかさが、逆に、ちょっとさびしかった。
ベランダで遠くを見ていた老婦人
――新宿からの帰り、どの辺だったっけ……たしか中野をちょっと過ぎたあたりだったと思う。年配の女性がアパートのたぶん3階のベランダにいて、てすりにすがって、遠くを見ていたっけ……。
萎えつつある足をささえるようにして、ベランダのてすりにつかまっている姿が痛々しかったのと、いったいどこをみているのか、ぼんやりと遠くを見ている様子がさびしかった。
電車のなかっていうのは、他人とすごく接近する場所で、いろんなにおい(香りじゃなく)がするもので……。経験があると思うけど、においって、ときに記憶をよみがえらせることがあるでしょ。
大月駅でのりこんできたおじさんがとなりに座ったんだけど、どこかなつかしいにおいがするわけ。遠足のときに食べた弁当を思い出したのね。新聞紙につつんである弁当……。なぜかなと思ったら、おじさんがスポーツ新聞を開いているわけ。あれは、弁当そのもののにおいじゃなかったんだと、はじめて気づいた。新聞紙のにおいだったんだ……